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ジャングルに自生する籐
ラタンは日本名を「籐」といい、竹やふじつるの親戚ではなく、ヤシ科の植物です。東南アジアを中心に熱帯雨林、亜熱帯、熱帯地域のジャングルに自生する非常に生命力の強い史上最長の植物です。
大変早い年月で成長し、表皮に多くの棘を有し、自立できなくなると倒れ、枝や葉の裏に付いた無数の鋭いトゲで他の樹木に沿いながら、太陽を求めて上方へ伸びていきます。
倒れては伸びるを繰り返し、ときに100メートルを超えるものもあります。
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環境にやさしい
成長の早いラタンは7年〜20年ほどで成長します。地球環境の中で森林伐採等が問題となっている木製品の木材よりも早く材料として使用できるようになります。
また、他の樹木にからみつき、樹木の成長を阻害するので、計画的な伐採をしなくても森林の環境が保たれます。
そして、空気中の炭酸ガスを固定させる優れた特性を持っています。
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ラタンの原産国
ラタンの資源国はインドネシア・フィリピン・マレーシア・タイ・ベトナムなど東南アジア一帯、南米、アフリカ、スリランカ等がありますが、インドネシアはラタン資源の85%を保有しています。
また産業素材としての強度や加工性に優れた良質の種類の幅広さと品質、量において、インドネシアが世界一です。
呼吸するラタン家具
加工されてもラタンは呼吸しています。多湿の季節には水分を吸収し、また乾燥した季節には水分を放出してくれます。
森林の環境だけでなく人にもやさしいラタン家具はオールシーズンご使用いただけます。
籐家具資材として
ラタンに分類される種属は約300種。そのうち産業用資材として利用されているものは約30種類ほどです。
大別して、太いものは家具のフレーム材として使用され、細いものはこれを裂いて皮籐(ピール)と芯籐(コア)をとり、
編んだり巻いたりする材料になります。籐は丈夫で、自然素材の中でも最も軽い材料です。
籐の素材としての特徴、種類と用途
ヤシ科に分類される籐の素材には木目に相当する
(グレイン)導管が通っていて軽くしなやかな特徴を持っています。
丸籐をそのまま加工して家具製品等ににするのが基本ですが素材の種類によって材料を使い分けます。
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導管のクローズアップ
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皮付きの籐材料(マノウ)
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皮を剥いだ籐材料(マノウ)
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皮籐材料(セガ)
籐の素材としての特徴、種類と用途
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マレーシア北部、スマトラ島などの山間部の傾斜地で生育します。
硬く美しい琺瑯質で覆われ、しなやかで丈夫な材料です。通常は琺瑯質を剥いで椅子などの主材料に使います。琺瑯質の皮をそのまま残して無塗装の籐家具も製作します。人、環境にとても優しい完全な自然家具です。
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スマトラ、スラウェシ、カリマンタン島などに広く分布します。
マノウ材に次ぐ太さを持ち加工性に優れて、しなやかで硬質な材料なので椅子のフレームとして、また、揺れ止めの構造材や、装飾の素材として幅広く需要の多い材料です。
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カリマンタン島の奥地に分布し太さ10mmほどのつる状でその果実は葡萄のような紫色、食用にも共されます。美しい琺瑯質で被われているので一定の幅で裂いて、薄く調整し皮籐(ピール)として、芯の部位は細い丸芯として籠、巻き、椅子の座や背を編み上げる材料として、また籐むしろなど敷物としての材料としても使われます。
この他にもルンティ、バタン材などの材料も丸芯、染色した皮籐やフレームに使われます。
最良の材料を選別
カザマではマノウ、トヒチ材などの最高級材を主に使用し、
更に最高級のセガ材の皮籐、丸芯の素材の中から最良の材料を更に選別して使用しています。
最良の品質を追求し材料の選別まで一環した管理の元、材料の品質管理も行っております。
籐という素材の持つ軽くしなやかで人に優しい自然素材を活かしたカザマの籐家具は、
人のライフスタイルに安らぎと安心を与えるインテリアアイテムです。
籐家具の特徴でもある軽くて丈夫、保守メンテナンス性も容易でデザイン性にも優れ、
これからの高齢化社会での生活スタイルにも最適です。
地震災害の起こる日本にあってとても軽量なので安心安全な家具としてもお勧めでき、デザイン性豊かな魅力的な素材の家具です。
高度成長を続けてきた工業製品の時代から、今自分の生活スタイルを見つめ直し、自然派、
スローなライフスタイル志向へと変化していく中でスローな素材を活かした籐家具の存在価値が見直されています。
軽くて丈夫で長持ち
籐の原材料は軽くてしなやかです。素材の種類と構造によって指一本でも持ち上げることが可能な、超軽量な籐椅子もございます。
お手入れ(メンテナンス)次第で、数十年から椅子によっては100年お使えいただけるのが籐椅子です。
自然素材でメンテナンス性に優れ、物を大切にする時代には最適の家具です。
天然自然素材の手づくり家具
東南アジアの豊かな自然の恵みの森林で育った貴重な籐は、地球環境にも優しく、熟練の職人が品質にこだわり
ほぼ全てを手づくりで製作します。木製品とはまた、違った味わいを持ち、使う人間に優しく癒しの家具です。
デザインと品質
籐の素材自体の特性を生かし、それぞれの生活シーンに沿ったデザイン性豊かかな商品開発を目標に、常に新しい生活具を発信しています。
丸芯(細めの芯籐)で編みこんだウィッカー(総編み込)、フレームワーク、皮籐(ピール)の編み込、またマホガニー材など他素材との組み合わせ
により多種多様のデザイン形態がが可能となり、オリジナルコレクションとしてモダン、ヨーロピアン、クラッシック、オリエンタル、アジアン、和など様々なデザインスタイルを取り入れたクオリティ& エレガンスががコンセプトです。
品質においても常に最高のものをめざし、お客様にゆとりの生活シーンをお届けして喜んで頂ける様、籐は最高級の材料を選別して使います。
各製作工程においても熟練した職人が最高の技術で、材料の選別からパッケージングに至るまで、厳重な品質管理もと製作されています。
西欧の籐家具、日本の籐工芸の歴史
紀元前4000年前、エジプトでスツールとして使われている石彫が最も古い考古資料として博物館に。
また西暦2世紀と思われる石のレリーフに、ローマの女性達の中の椅子が現在のウィッカーチェア(籐椅子)に近い形で残っています。
ヨーロッパで籐家具が使われ始めたのは、14世紀頃からで東南アジアに対して植民地政策をとり現地の労働力、
籐資源をもって籐椅子を作らせて自国に、持ち込んだのが最初です。原住民が籠などの生活具として籐を
活用していたものを籐家具としてイギリス、スペイン、フランスなどの国が籐家具を自国に持ち帰りました。細い籐芯で編んだ
ウィツカーチェアはビクトリアンデザインという貴族が好んでインテリアのアイテムとして使われていました。
第二次世界大戦前までヨーロッパ列強諸国は様々な様式の籐家具を作り東南アジアより持ち帰りました。
日本の籐の歴史
日本に籐が入ってきたのが中国を経由して1000年近く前、武士が誕生した頃まで遡り、竹籠や茶道具の縁まわしなどの装飾に
使われはじめました。柔軟性があって、巻く編むことができる竹細工の技術があった日本で重宝な素材として使われ、
建築においても釘を使わない一部の神社、仏閣の梁や柱などを組む時に補強として巻いて使われていたりもしました。
中世の頃は槍や、刀の鞘、弓の胴中仕掛、矢を入れる箙などを巻たり編んだりと実用と、装飾を兼ね備えた武具にも使われていました。
(正倉院の重籐の弓や厳島神社に平家が奉納した宝物の中にも鎧や、刀の鞘、印籠、出雲大社の箙(えびら)に
籐が使われていたりと文化、美術的にも大変貴重な遺産として残されています。)
籐家具として日本に入ってきたのは幕末、他国との貿易が始まり、その中で長崎を経て籐家具が入ってきました。
当時の幕末の志士の記念写真の中で座っている椅子が籐家具が使われていることもあったようです。
その後、明治期に入り横浜や神戸で中国人から籐家具の製造技術が伝わり、籐椅子が制作され始めたようです。
この頃、俗称を西京丸と呼ばれた籐椅子が普及したようです。また籐製の乳母車もこの頃より制作されだしたようです。
また、明治から昭和初期にかけて世界を行き来する手段は船しかなく、デッキ、ラウンジ、ダイニングの椅子は多くの客船で
籐椅子が使われていました。悲劇の客船タイタニック号でもダイニング等の椅子は籐家具です。日本も昭和初期は当時、
多数の客船を保有していました。当時は日本郵船の鎌倉丸をはじめ多数の客船で籐椅子が使われています。
(日本の客船は後の太平洋戦争で空母や病院船などに改装されてほとんどが米の攻撃により沈められてしまいました。)
旧日本海軍の軍用艦船の上級士官の椅子として籐家具を使っていたり、日本で最初に飛んだ飛行機として奈良原式、白戸式旭号など
(青森県立三沢航空科学館復元模型展示 操縦席をカザマで制作)の操縦席の他、日本で最初に飛んだ旅客機の客席に使われたりもしました。
カザマの籐家具製造は、太平洋戦争中はしばらく途絶えていましたが戦後、進駐軍の駐留もきっかけとなり復活し、米軍人家族からの需要も
相次ぎました。 その後、高度成長に伴い生活スタイルも変化し続けてきた中で籐家具の需要も拡大し、カザマ(風間展友先々代社長)が
日本で最初に台湾に提携工場を立ち上げ、フィリピン、そして現在は生産拠点を籐原料最大の原産国インドネシアへ移し高品質な籐材料、
最高技術の職人をもって、初めての飴色への着色からデザイン、機能も含めて、多種多様な籐家具の製品を作り続けています。
籐家具の制作は機械化技術が進んだ中で、今でも職人の手作りが基本です。
カザマでは籐家具の修理を承っております。カザマの家具は長くご愛用頂ける、品質に自信を持った商品です。
フレームがどうなったや、編みや巻きがこうなった、塗り直しやクッションなどでお困りの方は、お気軽にご連絡ください。
籐家具はメンテナンスさえしていただければ長年にわたりお使いいただける家具です。
カザマの籐家具をお使いいただいているお客様の中には親子孫の代まで三代引き継がれている方もいらっしゃいます。
籐家具本体の修理、塗り直しからクッションの張り替え、つくり直しまで、修理のことなら何でもご相談ください。
- 昭和初期の籐椅子の編み直し
- ダイニング編み座の交換修理